バージンロードで始めましょう～次期社長と恋人契約～

　そう言って、まとめた資料を自分のデスクに置いた副社長が足早に扉に向かうのを見た私も、急いでソファーから立ち上がって彼の後に続いた。

　独立型のチャペルと本館は隣り合わせで、スタッフ通路で繋がっているとはいえ、副社長室からは少し遠い。

　彼も私も言葉少なに急ぎ足で渡り廊下からチャペルの中に入った。

　一歩足を踏み入れた途端、天井までの高さが二十メートル以上ある本格的な造りの堂内中に漂う、清々しい生花の香りが全身を包み込む。

　チャペル最奥の見上げるような巨大なステンドグラスは、イギリスの歴史ある教会から譲り受けた逸品だ。

　技巧を凝らした彫刻が施された祭壇も、説教台も、参列者が座るベンチも、すべてが森の宝石と称されるマホガニー材のアンティーク。

　何度足を運んでも圧倒されてしまうほど美しい、かつ荘厳な空間の出入り口付近で、ボヌシャンス広報部のスタッフたちが額を突き合わせて話し込んでいる。