バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 その中に私服姿の見知らぬ面々が混じっているのは、彼らの足元に三脚やレフ板や照明器具が置かれているのからみて、おそらく今回の撮影を特別に外注したフォトスタジオのスタッフさんたちだろう。

 彼らは副社長と私が近づいて行くのに気がついて、揃って会釈をしてくれた。

「お疲れさまです。ボヌシャンス代表の名取響です。なにかトラブルがあったようですが」

 同じように会釈をして自己紹介をする副社長に、スタッフさんの中で一番年長の男性が、困惑顔で説明をしてくれた。

「どうもお疲れさまです。実はですね、依頼していた新郎新婦役のモデルが来ないんですよ」

「モデルが? どういうことでしょうか?」

 戸惑った声で聞き返す副社長に、ボヌシャンスの広報宣伝部のマネージャーが補足で説明する。

「連絡の行き違いがあったようで、こちらで押さえていたはずのモデルが男女共、今日は別の仕事に回っているらしいんです。モデル事務所側のミスなので、早急に代わりのモデルを采配するからと平謝りしているんですが……」

「代わりって、こちらはちゃんと条件を吟味して最高のモデルを指定したんだ。なのに間に合わせの人材を用意されても困るぞ」
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