バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 そのドレスは、貴明との結婚式で私が着るはずだったウェディングドレスに少し似ていた。

 もちろんあのときのドレスはこんな高級品じゃなかったけれど、長袖レースタイプの古典的なデザインという点が同じだ。

 デコルテが開いたドレスが圧倒的に多い中で、あのドレスはとても神秘的に見えて、一目惚れだった……。

「あ、そのドレスが気に入った? そういう正統派のドレスって、ウチのチャペルにすごく映えるのよ。じゃあちょっと着てみて」

 ぼうっとドレスを眺めながら過去を思い出している私の背中を、コーディネーターさんがグイグイ押して、一緒にフィッティングルームに入り込んだ。

 なんとなく気の進まないまま、私は彼女の手を借りながらそのドレスに着替える。

 十分袖のAラインドレスという王道のロイヤルスタイルながら、胸元や袖全体がシースルーのレース仕立てになっていて、重苦しさはまったく感じない。

 そのレース部分も、繊細で緻密なビーズ刺繍が施されていて、華やかさとクラシカルさのバランスが絶妙だ。
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