バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
「亜寿佳、どうした? 具合が悪いのか?」
明らかに様子のおかしい私を見て、副社長が気遣っている。
でも、ドクドクと不穏に鳴り響く胸の奥から濁った記憶が湧き出し、それが喉に重く蓋をして、どうしても声が出せない。
息が……苦しい。頭がクラクラする。
私は小刻みに胸と肩を震わせて必死に呼吸をしながら、なんとか気持ちを落ち着けようと周囲に視線を巡らせた。
彷徨う視界に映るものは、祭壇に置かれた燭台。ベンチを飾る純白の花とリボン。十字架の模様が刻まれた小さなランプ。
あぁ、貴明と一緒に結婚式のリハーサルをしたときのチャペルと、いま見ているチャペルが重なって、記憶と現実が曖昧になる。
ここで、ふたりは誓いの言葉を述べたんだ。
『死がふたりを分かつまで、愛し、慈しみ、共にあることを誓います』
そう誓った。誓ったのに……。
「亜寿佳」
強い口調で名前を呼ばれ、ふらついていた意識が戻った。
私を射貫くように見つめている副社長が、強張った声で、ゆっくりと話しかけてくる。
「俺を見ろ。目の前の俺を」
明らかに様子のおかしい私を見て、副社長が気遣っている。
でも、ドクドクと不穏に鳴り響く胸の奥から濁った記憶が湧き出し、それが喉に重く蓋をして、どうしても声が出せない。
息が……苦しい。頭がクラクラする。
私は小刻みに胸と肩を震わせて必死に呼吸をしながら、なんとか気持ちを落ち着けようと周囲に視線を巡らせた。
彷徨う視界に映るものは、祭壇に置かれた燭台。ベンチを飾る純白の花とリボン。十字架の模様が刻まれた小さなランプ。
あぁ、貴明と一緒に結婚式のリハーサルをしたときのチャペルと、いま見ているチャペルが重なって、記憶と現実が曖昧になる。
ここで、ふたりは誓いの言葉を述べたんだ。
『死がふたりを分かつまで、愛し、慈しみ、共にあることを誓います』
そう誓った。誓ったのに……。
「亜寿佳」
強い口調で名前を呼ばれ、ふらついていた意識が戻った。
私を射貫くように見つめている副社長が、強張った声で、ゆっくりと話しかけてくる。
「俺を見ろ。目の前の俺を」