バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
「亜寿佳。俺はお前が本気で好きだ。偽装じゃなく、俺の本物の恋人になってほしい」

「…………」

『NO』と口に出して言うには苦しすぎて、私は無言のまま弱々しく首を横に振った。

 やっと彼が明言してくれた私への気持ちを、こんな気持ちで聞くことになるなんて、あまりにも皮肉だ。

 振り返りもせずに背中を丸めてうつむき続ける私に、副社長は静かな口調で語りかけてくる。

「お前のつらさは想像できる。でも、いつかはお前も前へ進むはずだ。そのとき隣にいる男は、俺であってほしいと思う。お前は俺のこの気持ちを……俺を信じることができないか?」

 私は再び、首を横に振った。

 彼の言う通りこれが普通の失恋なら、私だって、いつかまた次の恋へ進めただろう。

 でも『次』を信じるには、この傷はあまりにも大きすぎる。

 私は決して、副社長の気持ちを疑っているわけじゃない。

 ただ、貴明だって彼女との関係を清算した時点では、本気で私との将来を望んでいたはずなんだ。

 なのに結局、あんなことになってしまった。

 なら、次もそうならないと誰が保証できるの?
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