バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 そこまで言うなら、やってやろうじゃないの。

 ボヌシャンス迎賓館を退職することは自分でも考えていたけれど、少なくとも今はやめた。

 あなたに、私をクビになんかさせない。

 見てなさい! この初仕事を立派にこなして、私がブライダルコーディネーターとして充分にやっていけることを証明してから、その鼻っ面に辞表を叩きつけてやる!

 強く睨みつける私の表情から、宣戦布告を受け取ったであろう副社長が、クールな言葉を返してきた。

「桜井様の挙式が済むまで、お前はそちらに専念しろ。今後は俺のサポートをする必要はない。もっともサポートが必要なのは、お前の方だろうがな」

 嫌味な言葉尻にカチンとくる私とは対照的に、副社長は薄ら笑いを浮かべるほど冷静沈着。

 そして、打って変わった紳士的な態度で、貴明に「それでは失礼いたします」と一礼し、悠々と部屋を出て行く。

 腹立たしい気配が完全に遠ざかるまで、私は微動だにせず扉を睨み続けていた。

 廊下に響く足音が聞こえなくなって、ようやく肩から力が抜けた私は、そこで自分の息苦しさに気がついて慌てて深呼吸する。

 い、いけない。頭に血が上りすぎて、呼吸するのも忘れてた。
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