バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 大抵の結婚式では親が費用を援助するものだけれど、貴明が勘当されてしまっている事情から、それは見込めない。

 しかも貴明は、私との結婚式をキャンセルした際に発生した違約金を、両親に毎月返済しているようだった。

 奥さんのご実家は、式をするなら費用を全額負担すると言ってくれているらしいけど、貴明にも男の面子というものがある。

 ご実家には夫婦の新生活スタートから、出産、育児に関してもなにかと援助してもらっているらしく、これ以上の負担は申し訳ないと言っていた。

 でもどう見積もっても数十万かかる費用を、赤ちゃんも借金も抱えた若い夫婦だけで全額賄うのは、ちょっと大変すぎる。

『もうさ、写真撮影だけでいいよ。それならだいぶ金額も抑えられるだろ?』

 やけっぱち気味な声でそう言う貴明に、私はキッパリ断言した。

「なに言ってんの。私のためにも式は挙げてもらうからね」

 最初の内こそ、貴明にはイヤミ臭い丁寧口調で対応していたけど、何度も打ち合わせをしているうちにそれも馬鹿馬鹿しく思えてきて、今ではすっかり普通にしゃべっている。

 この挙式は私のプライドのかかった勝負でもあるのだから、簡単に投げ出してもらっては困るんだ。
< 161 / 206 >

この作品をシェア

pagetop