バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 どうでも式を挙げさえすればいいわけじゃない。新郎新婦に心から満足してもらうことが、ブライダルコーディネーターの本質じゃないか。

 目先のことに捕らわれて目的を見失っちゃいけない。

「でも花代を削れないとなると、他はなにがあるかな? 少人数の慎ましい式だからこそ、料理やドリンクの質は落としたくないし」

 腕組みをして思案する私に、泉ちゃんがアイディアを出してくれる。

「じゃあ、会場使用料を節約したらどうでしょう? チャペル式じゃなくて人前式にするとか」

「それ、私も提案したんだけどね」

 貴明が話したら、奥さんはすぐ納得してくれたらしい。でも本当はチャペルで式を挙げたいのを我慢しているのがバレバレだったと、苦笑していた。

「奥様、ご主人に気を遣ってらっしゃるんですね。いいご夫婦ですねぇ。倉本さんがそんなに親身になるのも、わかる気がします」

 素直な泉ちゃんが、若夫婦の仲睦まじい様子に感心する。

 泉ちゃんには私と貴明の因縁は話していないから、とりあえず曖昧に笑って流しておいた。
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