バージンロードで始めましょう～次期社長と恋人契約～

「記念写真だけでビデオは撮影しないことにしたし、挙式小物も最低限に抑えたし、夕方からのトワイライトウェディングで開始時間割引も利用したし……」

　ふたりで額を突き合わせるようにして試算表を覗き込んで、削れそうな項目を確認していく。

「式の予約は冬ですから、オフシーズン割引が利きますね。仏滅挙式はダメなんですか？」

　泉ちゃんが提案してくれたけれど、私は首を横に振った。

　一般的に結婚式は春と秋が多くて、夏や冬は閑散期になる。

　そこに仏滅や赤口などの日を組み合わせれば、値引き率も上がるけれど、そうすんなりと話は運ばなかった。

「奥様のご家族が反対なさっているの。そんな縁起の悪い日に結婚式を挙げさせたくないって」

　若いカップルは六曜なんて気にしない……と言うか、そもそも『大安？　仏滅？　なにそれ？』って人も多いけど、親の年代はそうもいかない。

　大切な我が子の一生に一度の式を、わざわざ仏滅に挙げさせたくないと思うのも親心。

「それぐらいなら、やっぱり自分たちが費用を全額負担するってご両親が言い出して、堂々巡りになっちゃうの」

「じゃあもう、削れるところはないですよ。万策尽きました」