バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
「泉ちゃん、相談に乗ってくれてありがとう。私、もう行くね」

 私は軽く頭を振って、沈んだ気持ちを切り替えた。

 今の私にとっての最優先事項は、貴明の挙式を成功させることだ。それに集中しなきゃ。

「あんまり力にはなれないかもしれませんけど、いつでもまた相談してください。それと、副社長とも早く仲直りしてくださいね?」

 泉ちゃんの優しい笑顔に見送られて、私はフラワー部門ルームを後にした。

 装花代を浮かせられないなら、料理のコストをなんとか下げられないだろうか? バンケット部門に相談してみよう。

 そう思いながら廊下を歩く私の胸ポケットのスマホが振動した。

「はい。倉本です」

『こちら受付ですが、桜井様がお見えになっています』

「わかりました」

 貴明だ。あまりいい報告はできないけど、それでも挙式は諦めないように説得しなきゃ。
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