バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 スマホをポケットに仕舞いながら、私は受付へと急いだ。

 すぐにサロンに着いて貴明を探したけれど、彼の姿はどこにも見えない。

「倉本さん、桜井様はあちらでお待ちです」

 キョロキョロしている私に、受付係の女性が壁側を示しながら教えてくれた。

 そちらの方に視線を向けたけれど、やっぱり貴明の姿はない。赤ちゃんを抱っこした女性がひとり、窓から外を眺めているだけだ。

 でも、その女性がこちらを振り向いたとき、私の全身に強い衝撃が駆け抜けた。

「倉本さん、お久しぶりです」

 そう言って静かに頭を下げたその女性は、私から婚約者を奪った当の本人である、貴明の奥さんだった。






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