バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 ―― キュッ……

 モミジのような小さな手に、制服の生地をしっかりと掴まれてハッとした。

 優花ちゃんは清水のように澄んだ目で、私を真っ直ぐに見つめている。

 その邪気のない、どこまでも一途で、微塵も臆することのない視線を受けながらつくづく思った。

 この子は、なんの疑いもなく私を信頼している。

 過去の込み入った事情なんて『知ったこっちゃありません』とばかりに、こんなにも素直に自分の身を預けている。

 それも当然だ。だって本当に優花ちゃんにとっては、自分が生まれる前に起きた出来事なんて遠い世界の話だろう。

 それが“二年の月日”ということか。

 あのときの命を、こうして私が抱く日がきてしまうほど、たしかな月日が流れてしまったということなんだ……。

 しみじみと実感して、優花ちゃんを抱きながら体を揺らす私を見ていた雅美さんが、とつぜん深々と頭を下げた。

「倉本さん、ありがとうございます」
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