バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
雅美さんはイスから立ち上がり、私の手から優花ちゃんを受け取って抱き上げた。
「だから最初の約束通り、別れた後は一生会わないつもりでした。でも、この子を妊娠したことを知ったあの人が私のもとに戻ってきてくれて、嬉しくて嬉しくて、彼に縋ってしまったんです」
あのとき、私は彼らの詳しい事情までは知らなかった。
ふたりが付き合うようになった経緯や、その心の内なんて聞く余裕もなかったし、聞きたくもなかったから。
今こうして意外にも冷静に話を聞いていられる自分に、少し驚いている。
雅美さんは指をしゃぶり始めた優花ちゃんを愛おしげに見つめ、細い髪を優しく撫でながら語り続けた。
「だから入籍してからずっと、心にしこりがありました。倉本さんに申し訳なく思う罪悪感と、貴明が本心では、この子を疎んでいるのじゃないかと不安で」
「え?」
私は目を丸くして目の前の母子を見た。
貴明が我が子を疎ましく思うなんて、ありえない。
どう間違っても絶対にそんな陰惨な思考に走らない人だからこそ、私は彼に惹かれたんだから。
そんな私の考えを表情から読み取ったのか、彼女が苦笑した。
「でも私は負い目のある立場ですから、自信がなかったんです。なによりも、『この子のせいで人生を変えられた』と彼に思われているんじゃないかと、怖かった……」
「だから最初の約束通り、別れた後は一生会わないつもりでした。でも、この子を妊娠したことを知ったあの人が私のもとに戻ってきてくれて、嬉しくて嬉しくて、彼に縋ってしまったんです」
あのとき、私は彼らの詳しい事情までは知らなかった。
ふたりが付き合うようになった経緯や、その心の内なんて聞く余裕もなかったし、聞きたくもなかったから。
今こうして意外にも冷静に話を聞いていられる自分に、少し驚いている。
雅美さんは指をしゃぶり始めた優花ちゃんを愛おしげに見つめ、細い髪を優しく撫でながら語り続けた。
「だから入籍してからずっと、心にしこりがありました。倉本さんに申し訳なく思う罪悪感と、貴明が本心では、この子を疎んでいるのじゃないかと不安で」
「え?」
私は目を丸くして目の前の母子を見た。
貴明が我が子を疎ましく思うなんて、ありえない。
どう間違っても絶対にそんな陰惨な思考に走らない人だからこそ、私は彼に惹かれたんだから。
そんな私の考えを表情から読み取ったのか、彼女が苦笑した。
「でも私は負い目のある立場ですから、自信がなかったんです。なによりも、『この子のせいで人生を変えられた』と彼に思われているんじゃないかと、怖かった……」