バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
たしかに、あれから貴明の人生は激変した。
両親には縁を切られ、結婚して半年足らずで父親になり、大きな借金も抱えてしまった。
私と婚約していた当初の人生設計とは、似ても似つかない現状だろう。
そんな苦労をしている夫の姿を見て、雅美さんはずっと責任を感じて、貴明の愛情を信じ切れずに密かに胸を痛めていたのか。
「だから、あの人が結婚式を挙げようって言ってくれて本当に嬉しかったんです。しかも倉本さんが私たちの式を執り行ってくれると聞いたときは、夢かと思いました」
我が子をしっかりと抱きしめる彼女の目は赤く潤み、目尻から涙の雫が零れ落ちる。
声を震わせながら、彼女は私に言った。
「倉本さん、ありがとうございます。私、これでやっと救われます。本当にありがとうございます」
鼻の頭を赤くして、泣き笑いの表情で何度も感謝の言葉を繰り返す彼女の姿を呆然と見ながら、私は目の前の霧がスッと晴れていくような思いだった。
あぁ、私、勘違いしていたんだ。
この二年間、苦しんでいたのは自分だけだと思っていた。
幸せになったふたりの陰で、私だけが不幸で、可哀そうな人間なんだと思い込んでいた。
両親には縁を切られ、結婚して半年足らずで父親になり、大きな借金も抱えてしまった。
私と婚約していた当初の人生設計とは、似ても似つかない現状だろう。
そんな苦労をしている夫の姿を見て、雅美さんはずっと責任を感じて、貴明の愛情を信じ切れずに密かに胸を痛めていたのか。
「だから、あの人が結婚式を挙げようって言ってくれて本当に嬉しかったんです。しかも倉本さんが私たちの式を執り行ってくれると聞いたときは、夢かと思いました」
我が子をしっかりと抱きしめる彼女の目は赤く潤み、目尻から涙の雫が零れ落ちる。
声を震わせながら、彼女は私に言った。
「倉本さん、ありがとうございます。私、これでやっと救われます。本当にありがとうございます」
鼻の頭を赤くして、泣き笑いの表情で何度も感謝の言葉を繰り返す彼女の姿を呆然と見ながら、私は目の前の霧がスッと晴れていくような思いだった。
あぁ、私、勘違いしていたんだ。
この二年間、苦しんでいたのは自分だけだと思っていた。
幸せになったふたりの陰で、私だけが不幸で、可哀そうな人間なんだと思い込んでいた。