バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
「……本当に、亜寿佳にこんなことを頼んでよかったんでしょうか?」
とっさに私は体を引っ込め、壁にビタッと背中を貼り付けてしまった。
ふたつの人影は副社長と貴明だ。どうやら私のことを話しているらしい。
いや、べつに隠れる必要はないとは思うけど、神妙な様子で私に関することを話している真っ最中に、「どうもー」と本人が明るく顔を出すのもなんだか憚られる。
「名取さんにも、ご迷惑をおかけして申し訳ないです。すっかり敵役を押しつけてしまって」
「いえ、いいんです。彼女は向こうっ気の強い性格ですからね。わかりやすい敵役がいた方が気合いが入るタイプなんです」
「でもそれは本来なら、俺がやるべき役割なのに」
盗み聞きするつもりはないけれど、ふたりの会話が聞こえてくる。
わかりやすい敵役……。ということはやっぱり副社長は、自分が嫌われ役になって私を奮起させようとしてくれていたんだ。
本当に、なんて心の広い人だろうと感動すると同時に、こんな素晴らしい人に大切に思われている自分がちょっぴり誇らしくて、心がポカポカしてくる。
とっさに私は体を引っ込め、壁にビタッと背中を貼り付けてしまった。
ふたつの人影は副社長と貴明だ。どうやら私のことを話しているらしい。
いや、べつに隠れる必要はないとは思うけど、神妙な様子で私に関することを話している真っ最中に、「どうもー」と本人が明るく顔を出すのもなんだか憚られる。
「名取さんにも、ご迷惑をおかけして申し訳ないです。すっかり敵役を押しつけてしまって」
「いえ、いいんです。彼女は向こうっ気の強い性格ですからね。わかりやすい敵役がいた方が気合いが入るタイプなんです」
「でもそれは本来なら、俺がやるべき役割なのに」
盗み聞きするつもりはないけれど、ふたりの会話が聞こえてくる。
わかりやすい敵役……。ということはやっぱり副社長は、自分が嫌われ役になって私を奮起させようとしてくれていたんだ。
本当に、なんて心の広い人だろうと感動すると同時に、こんな素晴らしい人に大切に思われている自分がちょっぴり誇らしくて、心がポカポカしてくる。