バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 あのとき貴明の目の前には、ふたつの道があった。

 私と結婚するか。雅美さんと結婚するか。

 もしも貴明が私と結婚していたら、どうなっていただろう? 私たちは幸せになれていたんだろうか?

 そう自分の心に問いかけると、答えはすぐに出た。

 否。

 幸せになれるはずもない。

 雅美さんや優花ちゃんの存在に常に怯え、罪悪感にかられ、心穏やかな日々なんて送れるはずもない。

 いずれ結婚生活は破たんして、私は今以上に後悔していたはずだ。

 ……なんだ。

 なんだ。そうだったんだ……。

 私はそっと顔を引っ込め、壁に背中をもたれて天井を見上げながら、大きく大きく息を吐いた。

 貴明に選ばれなかったことにずっと傷ついていたけれど、そんなことに囚われる必要なんかなかった。

 私たちはあのとき、取るべき最善最良の道をちゃんと選んでいたんだ。
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