バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 だったら、なにひとつ恥じることも臆することもない。

 私たちの道は分かれてしまったけれど、お互いに堂々と胸を張って、それぞれの道を進んで行けばいいんだ……。

 心に根を張っていた余計な物が消えて、その部分に明るい光や爽やかな風がスーッと入り込んでくるような気がする。

 息をするたび全身がどんどん軽くなって、柔らかくなって、透き通っていくようだ。

 副社長が、あれほどがんじがらめだった時間から私を解放してくれた。

 彼の存在がなければ、私ひとりでは永遠に立ち止まったままだったろう。

 彼と出会えたことで、私は素直に過去と向き合い、事実を受け入れることができたんだ。

「どうですか? あなたはご自分が選んだ道を後悔していますか?」

「いいえ」

 副社長の問いに答える貴明の凛とした声を、まるで自分の声のように聞く。

「私は雅美と結婚したことも、優花の父親になったことも、微塵も後悔していません」

 見なくてもわかる。副社長、あなたはきっと今、微笑んでいますね?

 あの少年みたいに純粋で、綺麗な笑顔で。
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