バージンロードで始めましょう～次期社長と恋人契約～

「至極単純で、当然の意味です。亜寿佳と結ばれるべき相手は桜井様ではなく、他の誰でもない、この私だということです」

　その思いがけない言葉を聞いた瞬間、体中の血が目覚めるような鮮烈な衝撃を感じた。

　息をのみ、思わず背筋を伸ばす私の耳に、副社長の声が聞こえてくる。

「だから彼女が私以外の誰と恋に落ちたとしても、うまくいくはずがない。あなた方が結ばれなかったのは決して桜井様のせいではなくて、それが運命だったんです」

　彼の言葉のひとつひとつが、乾いた砂に染み込む澄んだ水のように、じんわりと心に染みていく。

　痛いほど切なく締めつけられた胸から涙がせり上がって、視界がじんわりと滲んだ。

　まさか、彼がそんな風に思ってくれていたなんて。

　どうしよう。私、こんなに嬉しい気持ちは生まれて初めて……。

「私が彼女をもっと早くに見つけてあげればよかったんです。でも、もう大丈夫。私は絶対に亜寿佳を離さないし、泣かせません」

「名取さん……」

「だからどうか桜井様も、安心してください。亜寿佳は私が守りますから」

　力強い声でそう宣言する副社長に、貴明が深い感謝の色を含んだ声で答える。

「俺が言うのもおかしいですけど、どうか亜寿佳をよろしくお願いします」

「はい。もちろん」