バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 私が卒業したブライダル専門校にも、他の学校と同じように実習のカリキュラムがある。

 それは実習生の手で実際の挙式を行うというもので、提携を結んでいるボヌシャンス迎賓館で毎年行われていた。

 学生たちでも手に負えるような、少人数の挙式に限られているけれど、もちろんボヌシャンスのプロたちのしっかりしたサポートのもとで行われるし、普通の挙式となんら変わりない。

 でもやはり実習生ということと、多少の段取りの悪さを考慮して、挙式の費用は通常では考えられないほどお安くなっている。

 これなら貴明が提示した予算内で、充分立派に式を行える。

 私自身、ボヌシャンスでこの実習挙式を経験した。だから副社長は、『お前なら方法を見つけられる』と言ったんだ。

「いかがでしょうか、桜井様。よろしければ実習挙式で式を挙げてみませんか?」

 そう持ちかけると、目の前の貴明の頬が喜びに緩んでいく。

「ぜ、ぜひお願いしたいよ。本当にいいのかな?」

 勢い込む彼に返事をする前に、私は隣の副社長に視線を移した。

 これで正解ですよね? 副社長?
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