バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
ウエディング・アイルを、あなたと共に
 体の芯がキュッと縮まるような冷たい夜風が吹いて、私の髪を揺らした。

 冬は寒くてちょっと苦手だけれど、他のどんな季節よりも空気が澄んで星が綺麗に見える気がする。

 私は夜の帳に覆われたチャペル入口の階段に立ち、清々しい空気を吸い込みながら、様々な色に瞬く小さなビーズのような星々をうっとりと見上げた。

 つい先ほど、貴明夫妻の挙式が無事に終わったばかりだ。

 私が間に入ったことで、貴明のご両親も参加してくれて、めでたく両家が揃っての式となった。

 貴明や雅美さんはもちろん、参加者全員が涙と笑顔の大盤振る舞いで、こんなに感動的な挙式は初めて。

 実習生たちや手伝ってくれた泉ちゃんも、盛大にもらい泣きしちゃって、本当に素晴らしい結婚式だった。

 式の責任者として一番冷静でいなきゃならない私も、こっそりハンカチで涙を拭っていたら副社長から、

「大事な話があるから、式が済んだらチャペルに来てくれ」

 と耳打ちされて、私はここに立っている。

 大事な話なら、私にもある。やっと自分の気持ちを彼に伝える日がきたんだ。

 私は、晴れがましくもドキドキと落ち着かない胸の鼓動を宥めながら、チャペルの扉を開けて中に入った。
< 201 / 206 >

この作品をシェア

pagetop