バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 花嫁の人生。聖なる道……。

 バージン・ロードの一番最初に、花嫁の母親が行うベールダウンの儀式は、『いま私は、母親のお腹の中に戻りました』という意味だ。

 そこから花嫁は、これまで自分が歩んできた人生を振り返りながら、自分の道を進むんだ。

「亜寿佳、ここへ来てくれ。俺のもとへ」

 副社長が私に向かってスッと片手を差し伸べる。私は胸を熱く高鳴らせ、迷わず彼に向かってバージン・ロードを歩き出した。

 この道は、私が歩んだ道。一歩前に進むごとに幼い頃からの様々な記憶が甦る。

 貴明との出会いと別れも、その内のひとつだ。

 とてもつらくて苦しくて、道の途中で立ち止まってしまって、もうこの場から一歩も動けないと思っていたけれど……私はまた、こうして歩き始めている。

 そう。このまま前に進むんだ。

 だってうずくまったままじゃ、私を待ってくれている彼のもとへはたどり着けない。

 ゆっくりと、でも確実に私の両足は交互に進んで、彼に近づいて行く。そしてついに、私の手と彼の手が重なり合った。
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