バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
「なあに? なんでも言って」

 甘く幸せな気分に浸りながら、私は優しい声で話の続きを促した。

 貴明はそんな私の笑顔に見入り、ツバを飲み込んでから、覚悟を決めたように大きく息を吸い込む。

 そして床に頭を激突させるほどの勢いで、ガバッと土下座をした。

「た、孝明? なにしてるの?」

 まさかそんなことをされるとは思ってもいなかった私は、驚いて目を丸くしてしまう。でも彼が次に放ったひと言が、それどころではない大きな衝撃をもたらした。

「俺と別れてください」

「…………」 

 あまりにも予想外すぎることを言われて、頭の中が真冬の湿原のように真っ白になった。

 言葉は理解できるけど意味が理解できない。『別れる』って、なに? どういうことを意味する言葉なんだっけ?

 それってこの場に相応しい言葉なの? だって……。

「だって、貴明。明日は私たちの結婚式だよ?」
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