バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 矢のような視線に晒されて、どんな顔をすればいいのかわからない。肩をすぼめて下を向いたまま、誰とも目を合わせないようにしてスタッフルームを出た。

 扉を閉めて数メートル進んだ辺りで、スタッフルームの扉の向こうからドッと大騒ぎが起こった気配がして、ガックリ意気消沈してしまう。

 そんな私の様子を見た副社長が、廊下ですれ違う社員たちの目を気にしているのか、顔に笑顔を貼り付けたまま小声で文句をつけてくる。

「おい、もっとちゃんと笑えよ。刑事に連行されてる犯人じゃあるまいし」

「あのぅ、なにもあそこまでやることなかったんじゃないですか?」

「派手に噂にならなきゃ信憑性に欠けるだろ? いいから笑え。俺たちは幸せな恋人同士なんだから」

 私は言われた通りに無理やりニコッと笑って、幸せな恋人同士に見えるよう努力しながら、できるだけ小さな声で囁いた。

「あの、それで送ってくれるというのは本当なんですか?」

「もちろんだ。今日から毎日、送り迎えをするからな」

「え!?」

 どうにか顔の下半分は笑顔をキープしたまま、目だけでギョッとした。

 毎日送り迎え? そんな計画聞いてない。
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