バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 反射的に目をギュッと閉じて肩をすくめると、真上から声が降ってくる。

「こら。お前、またミスしたな?」

 恐る恐る目を開けてみれば、しかめっ面をしたイケメンが丸めた書類を手にして立っていた。

「ふ、副社長。え? ミスってなんですか?」

 頭のてっぺんを撫でながらギクリとする私に、意地悪そうな声で彼が答える。

「来月の佐山様の挙式、フラワーシャワーからバルーンリリースに変更になったはずじゃなかったか?」

「あ!」

 しまった。それをさっき泉ちゃんに伝えるつもりだったのを、すっかり失念してた。

「すみません。今すぐ連絡します」

「もう俺がした。それと益田様の挙式で希望されているダーズンローズの詳しい手配も、プランニングシートに記載されてなかったが?」

 ハッとすると同時に、全身に冷や汗が浮かぶ。

 あぁ、そうだった。十二本の薔薇を新郎に手渡しするゲストを選んでもらうことと、その際に流すメッセージを考えてもらわなければならないのに、まだ返事をもらっていない。
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