バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
「あと、根津様のリングピローは? こちらで用意するのか? それとも根津様の方でご用意するのか?」

「す、すみません。花嫁様がご自分で手作りするかもとは仰っていたんですけど、まだはっきり確認していません」

 矢継ぎ早にミスを指摘されて、今にも顔から火が出そうだ。

 ここ最近になって、副社長が担当しているお客様の挙式プランの打ち合わせに、私も部分的にだけれど参加させてもらっていた。

 それでも決めなければならないことは山のようにあるし、その場ですぐに決まらないことは返事待ちだし、お客様も忙しいのでなかなか連絡がこないことが多い。

 しかも複数のお客様のプランの組み立てを同時進行しなきゃならなくて、時々頭の中で混乱してしまうことがある。

 それに副社長のお客様は、上場企業の代表や、スポーツ選手や芸能関係者といったセレブな方ばかりなので、お会いするだけで緊張してしまうせいか、ケアレスミスが続いていた。

 副社長がしっかりフォローしてくれるからいいようなものの、これじゃどっちがどっちをサポートしてるんだか。

 いっぱしのコーディネーターのような顔をしてお客様に接しながら、情けない。あのとき副社長が『今すぐひとり立ちというわけにはいかない』と言った理由が、痛いほどわかった。
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