バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
「それでは担当者が参りますので、このまま少々お待ちくださいませ」

 私は席を立ち、おふた方に丁寧にお辞儀をしてから、自分の持ち場である受付に戻った。

 入社してようやく半年の私に許されている接客は、ここまで。

 この先は正規のブライダルコーディネーターが対応することになる。

 私は以前に勤めていた商社を退社して、ブライダル専門校に入学して二年間学んだ。

 卒業時に、学校と提携している『ボヌシャンス迎賓館本店』の採用試験を景気づけのつもりで受けたところ、まさかの合格。

 希望しているブライダルコーディネーターになれる日を目指して、日々奮闘している。

 このネームプレートについている緑色のリボンは、まだ見習いの証だ。

 現在はドレス部門や、フラワー部門、バンケットサービス部門など各部門での経験を積んでいる段階で、この規定を終了しないと希望する部署には配属されない。

 あぁ、私も一日も早く、ここに来る人たちの結婚式を手掛けてみたい!

 もどかしい思いでサロン内を見回せば、花嫁・花婿予備軍のカップルさんが、それぞれ人生の一大イベントに向けて夢中で取り組んでいた。

 その生き生きとした表情を眺めながら、つくづく思う。まさか自分がこんな業種に身を置くことになるなんて思いもしなかったな。
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