目は口ほどにものをいう


「前から気になってたんだけど、なんでそんなに課長のこと嫌いなの?」

まぁ、そう思いますよね。
社内で一番人気のある人ですもんね。

「嫌いなわけではないんですけど、苦手なんです。
課長って、考えてること全然わからないんですよね。感情を表さないというか……」

「あははは!!!」

まほさんが急に笑い出す。目に涙まで浮かべてる。

??
「私、そんなに面白いこと言いました?」

「否。私にしてみれば、あいつほどわかりやすいやついないから。たぶん、そんなこと思ってるのゆかりちゃんだけだよ。」

そうなのだ。
入社して以来、先輩にも同期にもこのはなしをしたことがある。
でも、誰1人として同意してくれなかった。
『え?!雨霧課長わかりやすいよ。』
『すっごい笑うし、怒鳴ったりはしないけど怒るときはめちゃくちゃ怒るじゃん。』
そんな答えが返ってくる。

「あー、でも。ゆかりちゃんにはあんまり感情表してないね。」

………やっぱり。勘違いじゃなかったんだ。

「感情一つ表せないほど気を許してない相手と付き合うとか。正気じゃないですよね。」

私の言葉に、まほさんが困ったように笑った。
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