目は口ほどにものをいう



あぁ、そうか。

気づいてしまった。
課長が隠す感情が、私に向けられている気持ちだということに。
私に隠さないといけないような気持ちなら、最初から付き合うなんてしなきゃいいのに。

気づいてしまった。
まほさんに向けた目が、たまに愛しさを含むということに。



ずっと課長が苦手だった。
でも、ずっと彼のそばで彼を見てた。彼の優しいところも、厳しいところも。他の人と笑ってるのを見ながら、ずっとうらやましいと思ってた。あの優しい瞳に私をうつして欲しかった……

……心のどこかで、ずっと彼を想ってた。


でも、もう、今日で終わらせよう。

私に向ける気持ちが、いいものとは思えなくて。
課長はきっと、まほさんが好きで。

課長、どうして私と付き合ったの?
私はまほさんの代わりなの?
デートも手を繋いだのも、どういうつもりだったの?

なんで、どうして。そればかりが頭をめぐる。
涙で視界が滲んでくる。
ダメだ。ここは会社。私情を持ち込むところじゃない。
気持ちを切り替えて、パソコンにむかう。

先のない関係に終止符を打とう。
これ以上彼を想っても悲しいだけ。
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