目は口ほどにものをいう


土曜日、課長が連れてきてくれたのは、レストランだった。
予約していたようで、個室に案内される。
久しぶりの2人きりに、緊張する。

「藤本。今日は来てくれてありがとう。ここの料理はおいしいから、好きなの選んで。」

あ。名前……………

「こちらこそありがとうございます。」
名前で呼んでくれないことが、寂しい。別れたから、当然だけど。

メニューはどれも美味しそうだった。
注文したあと、課長に向き直る。

勇気をだして。

「課長。お話ってなんですか?」

課長がびっくりしたような顔のあと、困ったような苦い顔をする。

「ご飯おいしく食べたいから、後で。ね?」

せっかくだした勇気がしゅるしゅると萎む。
そんな顔をされたら、私はそれ以上なにも言えなかった。



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