目は口ほどにものをいう
司side
藤本ゆかり
俺の部下。俺の好きな相手。
彼女は俺を怖がっている。
でも、理由がわからない。
怖がられることをした覚えがないのだけれど。
彼女が入社した時、俺がたまたま指導係になった。
彼女の指導係になったとき、冗談じゃないと思った。
上司には指導するなら男性社員がいいと伝えてあったはず。
彼女以外にも女性社員の指導係をしたことがあったけれど、
媚びた態度をとってきたり、こっちは真剣に教えてるのにプライベートな話をしてきたり…
勤務時間中に告白してきたときは、ふざけるなと思った。
でも、彼女は違った。
ちょっと抜けてるところもあるけれど、
一生懸命メモを取り、わからないところはきちんと聞いてくる。
一度教えたことは忘れない。
がんばる姿を見ているうち、だんだんと目で追うようになった。
最初は、先輩として心配だからだと思っていたけれど。
彼女が他の男性社員と話してるのをみて、イライラした。
『彼女は俺のだ。』
無意識にそう思っている自分に気づく。
俺は彼女が好きなんだ。
でも、俺の気持ちがばれたらきっと指導がしにくくなる。
俺は、努めて平静を装い指導をした。
彼女と話すだけでにやけそうになる頬を引き締め、感情を殺す。
そのまま、俺の気持ちは変わることなく……
今は、平静を装い上司をしている。
彼女を思い、8年。
仕事を理由に、女性からの告白も、親からの結婚の催促も断ってきた。
そろそろこの思いをどうにかしようと、思っていた矢先。
母親が親同士の婚活パーティーで、勝手に相手を見つけてきた。
相談もなく、勝手なことをされ、腹がたった。
でも。
まさか、相手が彼女だとは。
このチャンスを逃しはしない。