目は口ほどにものをいう
咲はさんざんしゃべり倒した後、
「はい。約束通り鍵返すね。」
と、合鍵を渡して帰っていった。
はぁ……疲れた。
ゆかりを見るとクスクス笑ってる。
「咲さんって楽しい人ですね。」
「ごめんな。騒がしくて。話の途中だったのに。」
ゆかりの話を、中断してしまったことを謝ると、彼女は首を振った。
「いいんです。おかげですっきりしました。」
どういうことだ?
不思議そうにする俺にゆかりが続ける。
「この前、課長と咲さんが言い争ってるの見かけたんです。それで、どんな関係なんだろうってモヤモヤしてて。今日はそれを聞きたかったんです。」
どの日のことかわからないが、見られてたのか………
なにかあったときのために実家預けていた合鍵を、いつの間にか咲が持ち出し、勝手に部屋に出入りするようになっていた。まぁ、妹だし、言って聞くようなやつじゃないから諦めていたのだが。
ゆかりに合鍵を渡したいと思ったけれど、スペアは咲がもってる1本しかないし、ここの鍵は複製できない仕組みになっている。
咲に合鍵を返すよう言ったところ、「彼女に会わせてくれたら返す」と条件を出してきた。そのうちちゃんと紹介するからと言っても全く聞かず、「会わせて」「嫌」の押し問答が続いていたのだ。
ゆかりに戻ってきたばかりの合鍵を渡しながら話をした。
「私のことなら、気にしなくてよかったんですよ?課長の話をたくさん聞けてうれしかったです。それに、ほんとは合鍵渡してほしいなぁって思ってたんです。」
ゆかりはうれしそうに笑った。