目は口ほどにものをいう
健は30歳で起業した。
起業する数日前。私は健に告げられた。
「起業して、軌道に乗るまでは恋愛なんてできないし、まして結婚なんて無理だから。まほはまほのしあわせを掴んでほしい。」
そう言われた。
でも、健が好きだから。離れたくない。
『何年でも待つから』と、別れることを拒否した。
健は苦笑いで私の主張を受け入れてくれた。
その時の私は、今までだって起業の準備で忙しそうにしていたから、そんなに変わらないと思ってた。軌道にのるのもせいぜい2〜3年だろう。そう、思ってた。
でも、私の考えは甘かった。
デートの回数も格段に減り、ほとんど会えなくて。大変そうな健の力になりたくて、側にいたくて、一緒に住もうと伝えたけれど。
「家には寝に帰るだけだから。」
困ったようにそう言われ、それ以上は言えなくて。
それから7年。私はもう、35。
恋愛は自由。結婚だって、焦らなくていい。そう思ってきたけれど。
女にはどうしたって期限がある。
私は子供がほしい。好きな人との、愛する人との子供がほしい。
健との……
でも、『何年でも待つ』そう言ってしまったから。自分から結婚は切り出せなくて………
健は結婚なんて考えてないのかもしれない。
健に結婚する気がないなら、きっぱり別れて新しい相手を見つけた方がいいかもしれない。
そんなことを考えていたところに、彼の言葉は私のなにかを爆発させた。