目は口ほどにものをいう
にっこり笑って誤魔化したはずなのに、まほさんの目は欺けなかった。
定時すぎに帰ろうとしたところを、まほさんに捕まってしまったのだ。そのまま居酒屋へ連れてこられる。
「さぁ、話を聞きましょうか。」
まほさんがにこにこしてる………
どうせなら、私じゃなくて課長に聞いてくれたらいいのに……
でも、まほさんは私が課長を苦手なことを知ってるし、愚痴らせてもらうことにする。
「実は。課長とお見合いしたんです。」
「へ?!」
「親同士の婚活パーティーで、母親が見つけて来た相手が課長だったんです。」
まほさんがびっくりしてる。
「あげく、『付き合うことにするから』って言われて、押しきられました。」
「えっ?!ゆかりちゃんと課長が付き合うってこと?
なるほど。それであの浮かれようなわけね。」
「'名目上'ですよ。課長が浮かれてる理由は知りません。
課長が私となんてあり得ないし、私も課長は嫌です。」
「あいつも必死ね。」
まほさんがなにか呟いたけど聞き取れなかった。
「なにか言いました?」
「ううん。なんでもない。」