颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
桐生颯悟は、はあ、と深いため息をついた。
「じゃあこれから練習して。検索すれば動画サイト出てくるでしょ」
「ホントに勝負するんですか? 勝てる気がしないんですけど」
「オレが食べて審査するんだ。とりあえず食べられて形になってればいいよ」
「そうですか」
ある意味出来レースだ。このひとが食べておいしいって言えば決まりだし。これさえ終われば偽物婚約者の任も解かれるはず。
「ホントにキミ、女子力低いね。胸だってパッドでしょ? 全然揺れてないし」
「あ、え、あのっ!」
正解だけに反論できない。
「それと唇、ガサガサ。ちゃんとケアして」
「いや、ちょっと、その前に! なんでキスしたんですか?」
「減るもんじゃないでしょ」
「そういうことじゃなくてですね」
「しかも下手くそだし……」
彼は、はああ、とさらに深いため息をつく。
そりゃあ経験は浅いですけど! 付き合った人数はふたりだけだし!
でもキスがうまい女性もどうなの。そんなに慣れてる女の子のほうがいいわけ?
「じゃあ早速、今夜うちにきてコロッケの練習して」
「はい?」
「どうせ作るなら本番のキッチンのほうがいいでしょ。それにキミ、サボりそうだし」