颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
ぶっ。赤裸々な早百合さんの言葉にこちらが赤面する。
親に嘘ついて外泊してやりまくってたユウキくんに会ってみたい。

それはさておき。

年が空けて1月、受験勉強も華僑に入り、待ち合わせの図書館には現れなくなった。寂しかったけれど早百合さんはそれでいいと思った。

このままフェイドアウトして、サヨナラしよう。そう考えていた。
しかし。予定日を過ぎてもいっこうにこない月のモノ。試しに購入した検査薬は2本の縦線をくっきりと出した。陽性だった。

悩んだ。
知らせればユウキくんは困るだろう。
未成年者、しかも受験生、そして御曹司。妊娠させたなんて対面が悪い。子どもが子どもを作ったなんて笑われてしまう。

堕胎? せっかく授かった命を殺すなんてできない。
ましてや大好きなユウキくんとの間にできた命。絶対におろすなんてしたくない。

まだ膨れていないお腹に手を当てる。

ユウキくんとの赤ちゃん……。
早百合さんは産む決意をした。ユウキくんには知らせずに、ひとりで産むことを決めた。


「出産までは実家に頼ろうと思ったんだけど、父がカンカンに怒って。どこの馬の骨ともわからない男と節操ないことしてできた子どもなど許さないって。厳格な父だったし、そもそも私が四大を出てお菓子屋さんに勤めてること自体も遊んでる風にしか見えなかったみたいでね。仕方なくひとりで」
「ひとりで出産って、大変そうなんですけど」
「うん。大変だった」
< 107 / 328 >

この作品をシェア

pagetop