颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)


『なら、ちゃんと自分の足で稼げるようになったら迎えに来て』


と早百合さんは突き放した。



「ええっ、もったいない!」
「でもそこで、はい、と言ってしまったら、私も悠斗もユウキくんのご両親にたかることになる。それは嫌だったの。そんな父親、悠斗も認めないと思ったし」


ユウキくんは早百合さんに会いに来ることはなかった。やっぱりただのボンボンだったかと落胆もした。

でもユウキくんは早百合さんをあきらめたわけではなかった。6年後、再びプロポーズに現れた。ユウキくんは親御さんの持つホテルグループには勤めなかった。全く関係のないシステム関連の会社に就職していたのだ。親のコネも使わずに。


『あれから就職して自分の稼ぎで暮らせるようになった。だから結婚して』


そのとき悠斗くんは9歳、いろいろと多感な時期に入る年頃だ。今更、父親を名乗り出ても吉と出るかはわからない。早百合さんは断った。


『じゃあせめて養育費だけでも受け取ってほしい。ちゃんと僕が稼いだお金だから。ダブルワークは辞めて。早百合さんの体が心配だから』



それなら、と早百合さんはユウキくんから仕送りを受けることにした。その金額は毎年増額していく。そしてこのカフェを開業させた。
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