颯悟さんっ、キスの時間です。（年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも？）

あの落ち着いた風貌。そしてフツーのスーツなのに品位が見え隠れする雰囲気。それに一番の合致点はナッツ系のミルクティが大好物なこと。

あの佐藤課長がホテルグループ総裁御曹司？
親に嘘ついて外泊して、一晩で何回も早百合さんとしちゃった高校生？

言われればそんなやんちゃな雰囲気あるかも。やるなあ、佐藤課長……まあ、それは置いといて。


こんな大スクープを桐生颯悟は知ってるんだろうか。

桐生颯悟を見やる。左の頬に赤い痣ができている。オレンジが直撃したらしい。佐藤課長が早百合さんのお相手だと知ったらどうするんだろう。御曹司特権でクビとか？　いやいやそんなことはしないだろうけど、直に面識があるってのは結構クるかも。

オレンジを拾い終えて、早百合さんから濡れたタオルをもらう。いつもの窓側の指定席に座り、私は桐生颯悟の頬にタオルをあてた。


「冷たくて気持ちいい」
「すみません。本当は私がうけるはずだったオレンジ弾なのに」
「ううん、そんなのいいよ。追加されちゃったね、持久走」
「大丈夫ですよ。中高とバスケ部だったんで、走るのは得意ですから」
「みのり、ごめんね」


みのり、って呼んでくれた。どきっとしたけれど、きっと早百合さんや他のお客さんの手前、そんな優しい呼びかけをしてくれたんだと思う。キミからみのりに昇格したわけではなく。