颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)

タオルを押さえていた私の手に桐生颯悟の手が当てられた。私の手をサンドイッチにして、ぎゅうっとタオルごと握って。桐生颯悟はチラリと私を見たあと伏し目がちにテーブルに視線を落とした。


「……決めた。告白する」
「でも早百合さんは……」
「早百合さんは、なに?」


言えない。たぶん早百合さんは佐藤課長と結婚するなんて。話から伝わるラブラブ感に十中八九間違いないなんて。だからふられちゃう公算が高いですよ、なんて。

こないだまで私は桐生颯悟にもチャンスはあると踏んでいた。わずかでも可能性があるならば告白する価値はあるって。でも早百合さんの話を聞いて佐藤課長とのペアリングを見せつけられて、告白することに意義があるなんて思えなくなっていた。

なら、ここはぐっと我慢して、行きつけのカフェに来づらくなるのを回避すべきだ。ナッツミルクティーが飲めなくなるのは桐生颯悟にとっても得策ではない。


「ででででも! 祐理恵さんはまだあきらめてないですよ? ここここ告白は、ここ婚約解消してからじゃないと」
「みのりが止めてくれるんでしょ?」
「そ、それは、そそそそうですけど……」
「明日告白する。そのときはキミもいてくれる? 失恋したら慰めてよね」


あ、はい。
そう返事するのが精一杯だった。




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