颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
§タワーマンションに潜入しました
配属先の広報部デザイン課にもどる。すぐさま社内報のPDFを検索した。毎年1月は上層部のあけおめコメントが顔写真付きで掲載されるのを思い出したからだ。
だって桐生颯悟は駅前のカフェで待ってるとだけ言って社長室にもどってしまい、彼の正体がつかめず終いだった。
あった。今年の1月号。
桐生颯悟は3人いる副社長のひとりだった。
この顔で違いない。満面の笑みの画像はイイ子ちゃんのお坊ちゃま風。
このひと、腹黒ですよー!
だまされないでくださーい!
“あけましておめでとうございます。これからも業界一位に君臨するため、みなさんのさらなる飛躍を期待します。私もみなさんの支えになれるよう日々精進いたします”
ボンが何を。
精進ってキスのしかたとか? 毒舌の吐きかたとか? 胸の見分け方とか?
ふん、と鼻を鳴らすと背後から声をかけられた。デザイン課の佐藤課長だった。35歳のバツイチ、無精髭。まつげに掛かる黒髪を邪魔そうにかきあげる。床屋、行けばいいのに。
「今日の麦倉さんの歓迎会だけど」
あ、忘れてた! 今夜開くって言われてたんだ。
しめしめ、これでコロッケ作りはしなくてすむ。
「あれ、上層部の意向でなくなったから」
「はい? いまなんて」
「こっちが聞きたいよ。颯悟副社長秘書から突然内線がきて、今週いっぱいは定時で帰せ、って。こんなこと初めてなんだけど何かあるのか?」
「さ、さあ? 仙台支社は他支社から異動してきた社員には1週間残業禁止令がでるんですけど、それかもしれません」
「え、そうなの? ま、とりあえず早く帰ってゆっくりして。歓迎会は来週やるから」
断る口実があっさりと消えた。
手を回したな、桐生颯悟。
*―*―*
だって桐生颯悟は駅前のカフェで待ってるとだけ言って社長室にもどってしまい、彼の正体がつかめず終いだった。
あった。今年の1月号。
桐生颯悟は3人いる副社長のひとりだった。
この顔で違いない。満面の笑みの画像はイイ子ちゃんのお坊ちゃま風。
このひと、腹黒ですよー!
だまされないでくださーい!
“あけましておめでとうございます。これからも業界一位に君臨するため、みなさんのさらなる飛躍を期待します。私もみなさんの支えになれるよう日々精進いたします”
ボンが何を。
精進ってキスのしかたとか? 毒舌の吐きかたとか? 胸の見分け方とか?
ふん、と鼻を鳴らすと背後から声をかけられた。デザイン課の佐藤課長だった。35歳のバツイチ、無精髭。まつげに掛かる黒髪を邪魔そうにかきあげる。床屋、行けばいいのに。
「今日の麦倉さんの歓迎会だけど」
あ、忘れてた! 今夜開くって言われてたんだ。
しめしめ、これでコロッケ作りはしなくてすむ。
「あれ、上層部の意向でなくなったから」
「はい? いまなんて」
「こっちが聞きたいよ。颯悟副社長秘書から突然内線がきて、今週いっぱいは定時で帰せ、って。こんなこと初めてなんだけど何かあるのか?」
「さ、さあ? 仙台支社は他支社から異動してきた社員には1週間残業禁止令がでるんですけど、それかもしれません」
「え、そうなの? ま、とりあえず早く帰ってゆっくりして。歓迎会は来週やるから」
断る口実があっさりと消えた。
手を回したな、桐生颯悟。
*―*―*