颯悟さんっ、キスの時間です。（年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも？）

手をさしのべられ、起き上がる。浴室の方向に背中を押された。

入浴剤はラベンダーの香りで、お湯につかるとシュワシュワ感が肌に伝わってとても気持ちよかった。

さっきのキスは、なに？
汗に反応する変態行為ゆえのもの？

桐生颯悟は変態危険人物だ、気をつけよう。


＊―＊―＊

そんなわけで、翌日からのルーティンワークが変更になった。

出勤時は桐生颯悟と部屋を出て、会社に向かう。
定時で退勤したあと、フィットネスクラブで１０キロのランニングをこなす。
近場のエステへ移動して脱毛美肌美髪コースを受ける。
マンションにもどり４２階まで階段で上がる。
インターフォンを鳴らして桐生颯悟にドアを開けてもらう。
お風呂に直行する。
ごはんを食べる。

つまりは、先週カフェでバイトした時間帯にランニングとエステが入った。

フィットネスクラブでは専属のコーチがつきっきりで私の指導に当たる。途中苦しくて休もうとするとコーチが檄を飛ばす。専属コーチなんて体はいいけど、ただ単に私がサボってないか見張らせるために桐生颯悟がつけたのだ。

エステでは脱毛、フェイシャル、全身保湿、ネイル、ヘアパック。ほぼほぼフルコースの内容にいったいどれだけお金をかけたのかは一般人の私にはわからない。ムダ毛ジャングルだった私に桐生颯悟はあきれ果て、芸能人御用達の高級エステ店の予約を入れたのだ。

唯一、申し込まなかったのは痩身コースで。


「キミがこれ以上痩せたら胸がえぐれそうだからね」


と桐生颯悟は笑っていた。むかつく。


そんなスパルタな桐生颯悟だけど、やっぱり優しいと思うのは、お風呂とごはんの用意はしてくれた。