颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
風が爽やかだ。汗がすぐ乾くから走っていても心地いい。
ゴールライン内側で桐生颯悟と佐藤課長が楽しそうに話をしている。早百合さんの話でもしてるんだろう。同じ女性を好きになったもの同士、そして同じ御曹司としての境遇とか、共通点が多いだけに話も盛り上がるだろうし。

30分を過ぎても祐理恵さんのペースは落ちなかった。お嬢様だと高をくくっていたけど、これは手ごわい。私も必死に食らいつく。何周走っただろう、初めは数えていたけど、もう覚えてはいない。でも軽く5キロは走った。

40分。
前をゆく祐理恵さんの肩が上下に大きく揺れている。苦しそうだ。
私も苦しいけどまだいける。早く彼女を抜かないと。

50分。
あれ、祐理恵さんのペースが落ちた?
そう思った瞬間、私の視界から祐理恵さんの体がしゅんと下に落ちた。

祐理恵さんがこけた。彼女は起きあがらず、背中を丸め、左の足首を押さえている。

私は祐理恵さんのもとへ走り寄る。


「い……痛い……」
「祐理恵さん? ひねった?」
「ひねったわよ! あなたなにボヤボヤしてるの?!」
「なにって。祐理恵さん痛そうだから。冷やした方がいいし。病院に連れてかないと」
「どうして?」
「どうしてと言われましても。痛いの嫌じゃないですか。祐理恵さん平気なんですか?」
「なんで走らないの。走ればあなたの勝ちでしょ?」
「こんなときになに言ってるんですか。勝負はまたあらためてということで。とにかく冷やしましょう!」


そんな話をしていると桐生颯悟と佐藤課長がやってきた。
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