颯悟さんっ、キスの時間です。（年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも？）

「どうした、祐理恵嬢。くじいたか」
「くじいたわよ！　痛いから早くどうにかしてっ！」
「祐理恵さん大丈夫？　スプレーかけるね」


桐生颯悟は祐理恵さんの足首に優しく手を添え、靴下を下げると筋肉痛鎮痛消炎剤スプレーを足首にかけた。

誰にでも優しいんだわ、桐生颯悟。ちょっと妬けたりして。
そして私にも優しいのは桐生颯悟のデフォだからで、がっかりして。

佐藤課長はやれやれと両手のひらを上に向けたあと、祐理恵さんを抱っこした。


「祐理恵嬢の負けだな」
「負けてないわよっ！」
「祐理恵ちゃん、いい加減にしなよ。颯悟副社長とお前は結ばれない運命なの」
「そんなことないわっ！　私は颯悟さんと結婚するの！」
「わかってんだろ、ホントは。お前は颯悟副社長を好きなんじゃない、イエロードット電子株式会社のステータスに憧れてるだけなんだろうが」
「……だって猪瀬は農産物の扱いがほとんどで、コドモの頃から友達にバカにされて……いやだったの！　悠季も知ってるでしょ」
「まったく、その程度で。ほらほら行くよ、お嬢ちゃん」


え？
祐理恵さんが桐生颯悟と結婚したい理由はそこですか。




＊―＊―＊

祐理恵さんを病院に連れていくという佐藤課長とはそこで別れて。
桐生颯悟と私はマンションに戻ったわけで。

しばらくして、診断は軽い捻挫で心配はなく、桐生颯悟との結婚はあきらめると祐理恵さんから連絡がきて。