颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
つまりは、祐理恵さんとは婚約解消にいたったわけで。私はお払い箱なわけで。
そんなことを考えながらシャワーを浴びてリビングにもどる。
桐生颯悟はソファに座って文庫本を開いていた。長い足を投げ出して、ぼんやりとした表情。読んでるというよりは眺めている。本、面白くないのかな。壁のスピーカーからは相変わらず失恋洋楽が流れている。まだ早百合さんを忘れられないのか。2年も片想いしてたんだし、すぐ忘れられるハズもない。
私の気配に気づいたのか、パタンを本を閉じた。
私をにらむわけでもなく、笑うわけでもなく、強いて言うなら無表情だ。
「えええっと、祐理恵さんとの婚約も無事解消されましたね。なんかすっきりしない勝ち方でしたけど」
「ほんとはコロッケ対決で終わるはずだったんだし、いいんじゃない?」
「そう、ですね」
「お礼、なにがいい?」
「いえ、もうたくさんしてもらってますし。エステなんて初めてでしたし、しかもあんなフルコースとか。マッサージもすごーく気持ちよくてですね、だから十分です、はい」
「マッサージ好きなの?」
「はい。仙台にいるときは行きつけのマッサージ屋さんがあって担当のスタッフさんがいてですね。ご指名ってやつです。力があるひとなのですごくですね」
それを聞くと桐生颯悟はむっくりと立ち上がった。ズカズカと足を踏みならして私の元へ来る。なに、この殺気。黒竜巻・桐生颯悟だ。
「ふうん。ならマッサージしてあげる」
「ははははは、はい?」
「オレ、結構得意なんだけど?」
「そそそそそうですか……ひゃあっ!☆§●※▽■〇×?!」
桐生颯悟はするっと私を抱き上げてソファに寝かせた。首のマッサージ得意なんだ♪♪♪って首を絞められたらどうしよう。