颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
「そもそも私みたいな一般庶民じゃオートクチュールなんて厳しいですよ。いったいいくらするんだろう……はぁ」
カトラリーの立てられたマグカップからスプーンを引き抜く。チキンライスの上に乗ったオムレツにスプーンを入れるととろりと半熟卵が流れ出した。絶妙な火入れ加減に食指が動く。チキンライスとともにすくって口に入れるとふわふわととろけた。熱々だし、おいしい。
「じゃあ……ってあげ……るよ」
オムライスに集中していた私は桐生颯悟の言葉を聞き逃してしまった。
「ほーごはん、ひぃま、はんて(颯悟さん、いま、なんて)……?」
「だから。オレなら作ってあげられる」
「そりゃあ、そうですけど。お金持ちですし」
「そういう意味じゃない。みのりのバカ……」
桐生颯悟はそう言ってオムライスを口に運んだ。心なしか彼の頬が赤い気がする。きっとオムライスが熱かったんだろう。
キミ、バカ?、から、みのりのバカにステップアップしたけど、すっきりしない。バカには違いないけど。
「そういえば今日、仙台支社の支社長が本社にくるよ」
「ほうはんへふかっ(そうなんですか)!!」
「知ってる?」
「知ってるもなにも。超有名人です! お婿さんにしたい男ナンバーワンですよ! イケメン、長身、ダンディの三拍子!!」
なにそのテンション?、と桐生颯悟はあきれ顔をしていた。
仙台支社長は仙台支社女子の憧れの的。食いつくとこ、間違ってないですけど?
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