颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
「ふっふふっふ、ふーん♪」
「いつもより化粧が濃いよ」
「入念なメイクと言ってください♪」
「なに、そのスカート。膝上って」
「このくらいの方が動きやすいんですってば」
「なんなの、その見え透いた態度は」
「一度でいいから目を合わせたいと申しますか、声をかけられたいと申しますか」


仙台支社長とどうこうしたいわけではない。仙台支社長は仙台支社ではアイドル的な存在で、目と心の保養をしたいだけで。

エレベーターを降りて一緒に出勤する。桐生颯悟の荷物がたくさんあったので手伝うことにした。仙台支社長を拝めると思うと両手のにもつも重さを感じない。

歩道を並んで歩く。
はむはむカフェの入るビルはひっそりとしていた。いつもの黒板は出ていない。臨時休業の札がドアにかけられていた。

3人が顔を合わせるのは今日だ。

ちらりと桐生颯悟を見やる。ふう、とため息をこぼしていた。
やっぱり落ち着かないとか? 踏ん切りつかないとか?

そんなことを考えていると、なにやら人に見られていることに気づいた。
イエロードット電子株式会社自社ビルのロビー。私を見ているのは社員たちということだ。


「颯悟さん、視線を感じますが」
「そう? ほらみのり、エレベーター来たよ」
「はあい」


まわりから、颯悟さんって言った!、みのりって呼び捨て~っ?、と甲高い声があがる。やっぱり、とか、うそ、とか、そんな単語もちらほらと。
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