颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
ドン!
大きな音に私の体はぴくりとした。
カウンターの上に置かれた皿にはビーフシチューが盛られていた。乱暴に置かれたせいで、お皿の縁から茶色い液体がはみ出ている。ドンドンドンドン。パン、サラダ、グラスと二人分の食事を桐生颯悟は乱暴に置く。
眉間にしわを寄せ、口をへの字にして難しい顔をしていた。
「颯悟さん?」
「冷めるから。早く手を洗ってきなよ」
なんだか機嫌が悪い。私は洗面所で手を洗ってうがいしてカウンターに座った。桐生颯悟は先に食べ始めていた。
無言。
負のオーラがぐいぐいと私の元へ押し寄せる。早百合さんのことでナイーブになってるのかと思ったけどそうではなさそうだ。
いただきます、と手を合わせてからカトラリーを取る。その向こうに見える桐生颯悟はまつげを伏せ気味にしていた、思い詰めた表情で。
こんな顔、見たことがない。
怒っていて、それでいて、切なそうで。今にも泣きそうな顔で。
心配になる。
「……もういいよ、同棲生活」
「え……?」