颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
「ビーフシチュー、みのりの好物でしょ?」
今夜で最後だから私の大好きなビーフシチューにした、ってこと?
最後の晩餐?
桐生颯悟は私と目も合わせず、ビーフシチューを口に入れる。
なんだかいたたまれない。話しかけるのもはばかられて、私も黙ってビーフシチューを食べた。ご馳走なのに美味しくない。味がしない。
どうして?
どうして怒っているの?
聞きたくても聞けない。
黙々とビーフシチューを食べる。
なにもしゃべらないから、食べるしかなくて、すぐに皿は空っぽになってしまった。
「かなり噂になってるけど、どうする?」
「噂って?」
「オレと付き合ってるって。今朝もそうだったでしょ? オレにふられたってことになれば本社に居づらいでしょ。地方にもどる? 仙台にもどっても人の口に戸は立てられないけど、逆に利用する手はあるよ」
「利用って?」
「副社長とつきあってた女って知れば、みんなよってたかってくる。情報欲しさにね。その中から捕まえれば? そういう仕事肉食系はタフだし大切にしてくれるよ。もしかしたら意中の支社長にも声かけられるかもしれないし」