颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
「颯悟さんっ!」
私の呼びかけに彼はドアノブに掛けた手を止めた。
「なに」
「私がいなくなっても平気なんですね?」
「だってそれはキミが望んだことでしょ? そもそも婚約解消するまでの約束だったんだし」
桐生颯悟の背中を見つめるけど、じっと動かない。彼に振り返ろうとする気配はない。
いやだ、こんな別れかた。
「私……アタマ、冷やしてきます」
私は部屋を飛び出した。
*―*―*
エレベーターの下りボタンを押すと扉はすぐに開いて、中のパネルはLBを表示させた。そのままぼんやりと立っていると扉が閉じて降下を始める。
隣で桐生颯悟を見ていられるだけで幸せだった。ドキドキしてキュン死して、小さいことで喜んだり嘆いたり。モノクロ映画が突如色めきだして、カラー化されて、いろんなものが鮮やかに踊り出す。