颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
しかしエレベーターの扉が開く様子はない。これでは42階にもどれない。

このままここで放置?

いや待て。
まさか、階段使え、とか?
桐生颯悟ならありうる。
お財布を持たずに家出したキミが悪いんだよねー、と意地悪に笑いながら。

それもありうる。うう。

エレベーターの到着を知らせるランプが点滅した。他の住人から見たら私は不審者だろう。エレベーターにも乗れず、ぼんやり突っ立ってるんだから。

しょうがない。ひとつため息をつき非常階段に向かおうとした。


「みのり」


その中にいたのは桐生颯悟。
眉をしかめて、口元を一文字にして、怒りのオーラをまとって。
ずんずんと長い足で床を蹴るように歩き、私の前に来た。

桐生颯悟は私の二の腕を鷲掴みにした。すごい強い力で、逃がさないと言わんばかりに。

腕が痛い。
それよりもその瞳が怖い。


「ああああのっ、颯悟さん?」
「いいから乗って」


顎をしゃくる。
強引に引かれエレベーターに戻された。非接触キーは42のボタンを光らせ、エレベーターは扉を閉じた。狭い空間にふたりだけになる。

エレベーターが加速度をつけ、上昇する。
バツが悪そうに桐生颯悟は私を見つめていて。

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