颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
「だって、みのりはすぐほかの男についていっちゃいそうだから」


そんな、ひとを犬とか猫みたいに。
私がむっとする前に桐生颯悟はさきにぶすくれていた。


「いまどき他人についてく飼い犬も飼い猫もいないのにね」


ってか、私は動物以下ですかっ?


「そんなこと……」
「だって昨日だって支社長に“仙台にもどっておいで”って言われて、ハイ、って返事してたじゃん?」
「たしかに言いましたけど! それはまだ颯悟さんに告白される前で、まだ付き合う前の話で!」
「ハイハイ。オレを好きなのに他の男にホイホイ釣られるのは同じでしょ。ホントひどいよね、みのりって。ごはん食べよ?」


カウンターの上には目玉焼きの乗ったプレートがあった。添えられた温野菜から湯気があがって、ほんのりバターの香りがした。キャロットラペと黒豆の甘酢漬けもちょこんと乗っていて見た目もかわいい。

スツールに腰掛けると、桐生颯悟はとなりに座った。ひとつ空けずにすぐ隣に。


「あのぅ。ひとつ空けなくていいんですか? バカが移るから近づくなって」
「ああ、あれ? あれは近くにいるとキスしたくなるから。こんなふうに」


ちゅ。顎を摘ままれて軽くキスされた。油断も隙もない。
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